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「植物はヒトを操る」という作家のいとうせいこうさんと育種家の竹下大学さんが刺激的なサイエンストークを繰り広げる本を読んでいて、すごく興味深いことが載っていました。
その昔植物は決められた生育地域の中だけで繁栄することしかできませんでした。
十八世紀のヨーロッパでプラントハンターと呼ばれる人達が出現すると、このプラントハンターたちが世界中の珍しい植物をヨーロッパに持ち帰って時の権力者(王様)に献上していたのだそうです。
そして、その王様の庭で世界各国から集められてきた植物たちが虫の力を借りて新種を作り出していくのです。虫に花粉を運んでもらったということですね。
こうして現れた新種を「種間雑種」と言うそうなんですけど、この当時は雑種が作れない単位というのが「種」だったので、とんでもない発見だったんですね。
この発見以降イギリスの会社で商業として新種の植物が作り出されていくようになるのですが、これが植物の育種(品種改良して新しい植物を作ること)の始まりになったのだそうです。
植物たちはプラントハンター達を巧みに操って出会ったことのない植物のいる王様の庭へ運ばせて、新たな「種」を作りました。
同じく十八世紀のヨーロッパのお話しです。
ナポレオンの治める帝政フランスはイギリスをはじめヨーロッパ各国に宣戦布告をしました。
フランスの皇帝ナポレオンの妻ジョセフィーヌはバラのコレクターとして有名だったのですが、ナポレオンの治める帝政フランスがヨーロッパ各国に宣戦布告をしたことでジョセフィーヌの好きなバラが手に入らない。誰もがそう思いますよね。
しかし、この状況にもかかわらずジョセフィーヌはイギリスからバラの最新品種を買い続けられたそうです。
イギリスとフランスが争う中で、バラはジョセフィーヌを使って一族の一部をフランスへ移動させることに成功したのです。
こうすれば、どっちの国が勝っても自分たちの子孫を残すことが出来る。かの有名な戦国武将の一族の生き方にも重なるものがありますね。
ジョセフィーヌはうまく利用されたのでしょう。
ヨーロッパから日本に話は移ります。
日本の杉も賢いんです。
昔の日本人は杉が役に立つと思って大量の杉を植えるのですが、杉としてはしめしめといったところでしょう。
花粉症に苦しむ人間を見て楽しんでいたのかもしれませんね。
花粉症で困る人間は当然杉以外の木を増やそうと思いますよね。
すると杉は、花粉を出さないようになって再び人間に価値あるものとして認められ増殖していくんです。
この花粉を出さないすぎはここ数年、本当に出現してきているらしいんです。
農林水産省のホームページでは、スギ花粉の少ない春に向けた取り組みとしてこの花粉を出さない杉に期待しているというようなことが掲載されていました。
それでも花粉症の人にとっては天敵以外の何者でもないので、全て伐採して他の木を植えればいいのにって思ってしまいますよね。
実は杉を「ゼロ」にできないことにもきちんと理由があるんです。
1つ目は、土砂崩れのような災害対策になる。
2つ目は、地球温暖化防止になる。
特に杉は二酸化炭素の吸収力がヒノキやカラマツ、クヌギなどと比べて相当優れているそうです。
この地球のことを考えると、杉の戦略に乗ってこの花粉を出さない杉を増殖させていくのが僕たち日本人にとって一番いい選択なのかもしれません。
こうして植物たちはこれからも生き残るために、あらゆる手段、ものを使って人間を利用して生き延びていくのでしょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。